研究課題/領域番号 |
12576024
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
朔 敬 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (40145264)
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研究分担者 |
鈴木 誠 新潟大学, 歯学部附属病院, 講師 (50107778)
大城 和文 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (50332648)
程 くん 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (40207460)
依田 浩子(米持) 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (60293213)
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キーワード | リンパ上皮腫 / 唾液腺腫瘍 / EBV / LMP-1遺伝子 / 遺伝子多様性 / 細胞培養 / PCR / 発癌性変異 |
研究概要 |
(1)LMP1遣伝子解析(1):中国台湾ロシア各地のリンパ上皮腫60例について、パラフィン切片から回収したDNA標品からをPCR法によってEBウィルスのがん原遺伝子LMP-1遺伝子C末端の233bp断片を増幅しえた症例が40例えられた。このPCR産物を直接シークエンス法によって検索し。B95-8株と比較したところ、特徴的30bp欠損がある19例と欠損のない21例とに区別された。欠損症例は中国広東省と台湾と四川省の患者に高頻度にみとめられた。一方、無欠損症例は上海から北部の地域の患者に多い傾向があった。さらに、欠損症例群では、鼻咽頭癌由来のCAO株同様にコドン322はじめ3コドンに変異がみられたほか、これまでに未知の点変異やフレームシフトが広範囲にみつかった。これに対して、30bp無欠損症例では、多数の共通する点変異がみられたが、その頻度は欠損症例にくらべて低く、さらにサイレントミューテーションが多い傾向があった。したがって、唾液腺リンパ上皮腫では少なくとも大別二系統のEBV株が関与しており、そのウィルス多様性には地理的因子が関与していることが明らかとなった。従来は、30bp欠損が発がん機序に関与していることが強調されたが、今回の検索結果、この欠損はEBVの多様性とみなすのが適切であり、発がんに直接の関与は少ないことが示唆された。 (2)LMP1遺伝子解析(2):上記(1)項の結果、LMP1遺伝子のC末端だけでなく、より広い範囲を検索する必要が明らかになったので、12例について同遺伝子全領域を解読した。その結果、同遺伝子の変異はC末端のみならず、主として細胞膜貫通ドメインに3型の変異様式の存在が判明した。リンパ上皮腫における同遺伝子はCAO株より低分子量のB95-8株以下の大きさであったが、変異様式についてはCAO株と類似していた。したがって、唾液腺癌と鼻咽頭癌には類似のEBVが関与している可能性が示唆された。 (3)LMP1遺伝子解析(3):上記(2)項の結果、リンパ上皮腫由来の変異ないしは多様性LMP1遺伝子をベクターに組込み、293細胞にトランスフェクトして、NFkBおよびAP-1活性を検定して、その発癌性を検討する実験を開始した。 (4)培養細胞による実験:前年度に引き続き、中国側共同研究者とくに上海第二医科大学病院ではリンパ上皮腫症例が多いので、新鮮症例全例を培養系に移すことを試みてきた。このうち、昨年度末に日本側に移転した細胞は一昨年度につづいて再度増殖不能となった。その後、6月ならびに10月に同病院で初代培養にうつした細胞をそれぞれ維持したのち、いずれも新潟大学に移転した。しかし、いずれも、継代をかさねると増殖不能となった。さらに、年度末には上海市復旦大学がんセンター病理部に依頼して、同病院における手術材料からの単離細胞を待機中である。
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