研究概要 |
絨毛性疾患はhCGを産生する、妊娠絨毛の腫瘍化により発症し、時に致死的転帰をとり、束南アジアで多発する。腫瘍化によりhCGの糖鎖構造や活性は大きく変化するので、糖転移酵素を含めた種々の蛋白発現制御機構の解析に適した糖蛋白ホルモンである。日本では激滅しており、多発地域での患者尿の精製、腫瘍組織のDNA, RNA抽出技術等を有するカウンターパートが存在して可能となり、タイ国マヒドール大学内科学教室をカウンターパートとして共同研究を行った。現在なお検体数は充分ではないが、hCGの糖鎖構造を等電点分析,シアル酸分析,脱糖鎖酵素処理に対する特性,レクチン吸着性その他の解析を行った。また絨毛性疾患由来hCGの腫瘍化による糖鎖構造の変化を、糖転移酵素の遺伝子発現より解析した。その結果甲状腺機能亢進症を呈する症例と亢進症を呈しない症例が存在し、hCG糖鎖に差の存在することが明らかとなった。等電点で中性域に分画の多い症例が機能亢進症を呈し、酸性域に分画の多い症例では亢進症を呈しない。またシアリダーゼ処理した場合、酸性域分画は中性域に移動しており、酸性分画分子はシアル酸が多く結合していることが示された。亦RT-PCRによるシアリダーゼ(6種のアイソマーの存在が知られている)遺伝子発現量をみると、やはり酸性分画の多い絨毛性組織より抽出したRNAからは多くの発現量が見られた。亢進症症例ではその発現量は少なかった。しかし正常妊娠例のhCGは絨毛疾患hCGよりは酸性域分画は多かった。しかし本疾患の重症度とシアル酸量との相関性は症例を増やすことで検討したい。
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