本研究の遂行のため、新プラトン主義哲学、マリウス・..、アウグスティヌス、偽ディオニュシオス・アレオパギテス、マクシモスなど関係文献を収集するとともに、パソコンなど文書処理機器を備えて、文献表(データベース化)を作成し、またそれら文の読解と重要事項のデータベース化作業を行った。 中世哲学がギリシャ古代哲学と基本的に異なってesseを最も根本的な概念とする哲学として登場するのはマリウス・ウィクトリヌスからと思われるので、まずウィクトリヌスに関しては著作『マリウス・ウィクトリヌスのカンディドゥス宛書簡』の分析を行った。 そのほか、アウグスティヌスについては『告白』と『三位一体論』を中心に、エリウゲナについては『ペリピュセオン』、『ヨハネ福音書序文講話』を中心に、偽ディオニュシオスについては『神名論』と『天上位階論』を中心に、マクシモスについては『アンビグア』を中心にesseとessentiaの概念の考察をした。 以上の研究成果は「『マリウス・ウィクトリヌスのカンディドゥス宛書簡』の研究-序論・和訳・註解-」(『ネオプラトニカII新プラトン主義の原型と水脈』pp.185-212所収)、「ギリシア哲学の存在論とラテン中世-エリウゲナにおけるessentia-」(『カルキディウスとその時代』pp.77-98所収)および山梨大学教育人間科学部紀要(第2巻2号、第3巻1号)に発表した。
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