研究概要 |
1)資料収集その他 前年度に引き続き書籍の購入・借受や文献複写により国内外から関係資料を収集した。特にPontificla Institute of Medieval Studies(Toronto, Canada)においてはこれまで得られなかった貴重な資料を得ることができたし、またE.Jcauncau教授を初めとする研究者たちとの意見交換によりディオニュシオス、マクシモス、ニュッサのグレゴリオス、エリウゲナについて多くの有益な教示を得たことができ、それが研究の遂行に非常に役立った。 2)研究の内容 マリウス・ウイクトリヌスとアウグスティヌスにおける存在の概念についての先行研究を検討すると共にそれぞれの思想家の第一次文献に当たって存在の概念について研究を進め、また両者の関係について解明に努めた。その結果、ウィクトリヌスの存在概念の解明はまだ詰めるべき余地を残しているが、アウグスティヌスの存在概念については概ね全体的な理解を得られたと思われる。 両者の関係の解明については、研究を進めた結果、ウィクトリヌスとアウグスディヌスとをつなぐ思想家としてアンブロシウスの存在概念についての研究が新たな課題として浮かび上がった。 ポルピュリオスの存在概念の研究を進めたことによって彼がウィクトリヌスの存在概念の形成に対して重要な役割を果たしたであろうことがほぼ跡づけられた。今後、P.Hadotなどの先行研究を批判的に検討したい。 『カルデア神託』における存在概念の研究は必ずしも計画通りには進まなかったので、来年度には重点的に取り組みたい。 本研究の成果として論文「因果性小考-エリウゲナにおける新プラトン主義的要素の研究」を山梨大学教育人間科学部紀要第3巻2号に発表した。
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