研究概要 |
本年度は、まず、すでに公表しているロック哲学の読み直しに関して、その妥当性の再確認を行った。特に、ロックの知覚表象説(三項関係的認識論の枠組み)と、直接実在論的契機(日常的・二項関係的観点)との関係を再度検討することにより、観念説本来の自然主義的論理空間の重層構造を確認し、従来行われてきた二つの解釈(知覚表象説的解釈と直接実在論的解釈)と、その重層構造との関係を明確にするよう努めた。 また、ロックに認められる観念の自然主義的論理空間が、デカルトの観念説にも認められるかどうかについても、併せて検討を行った。その検討に際しては、自然学から形而上学(第一哲学)へという方向性と、従来自明のこととされてきた、形而上学から自然学へという方向性との、動的・重層的連関が、検討対象となった。 (私の提示したロック解釈の新たな方法は、平成12年にイギリスで出版された二つの研究書(John W.Yolton,Realism and Appearances [Cambridge:Cambridge University Press,2000],pp.59f;Stephen Gaukroger et al.[eds.],Descartes'Natural Philosophy[London:Routledge,2000],p.587,n.17)においても、その重要性が指摘された。) 以上の研究に基づき、本年度後半には、二年後に予想されているバークリ研究を先取りする形で、バークリの観念説をどのように読むべきかについて、予備的考察を試み、その成果を関西哲学会において発表した。バークリが、ロック的観念説の基本的枠組みに依拠しながら、いかにしてその枠組みを歪めたか。その概要を明確にすることが、その考察の焦点となった。
|