研究概要 |
観念説的認識論は、古代の原子論に由来する、粒子仮説的自然学を基盤とするものであり、「観念」や「表象」は、そうした自然学的論理空間の中に、それ自身の位置を有していた。したがって、「観念」や「表象」を維持しながら、自然学的要素を切り捨てようとする、バークリやカントの認識論的営みは、自然学的論理空間に依拠しつつ、同時にそれを解体しようとするという意味で、いわば、自らの足下を掘り崩す営みであった。ロック以後のこの観念の論理空間の解体過程を、特にバークリの場合を取り上げて明らかにすることが、本研究の主要目的であった。 この目的を達するため、本年度前期では、ロック的な自然主義の論理の崩壊過程におけるバークリの観念論の位置を更に明確にするための、一連の作業が行われた。まず、バークリの影響を受けつつ独自の観念説的認識論を提出したヒュームに焦点を当て、その認識論の特徴を明らかにすることが試みられた。そして、ロックに顕著に認められる自然学的思考がヒュームにおいてはどのような位置を占めるかを明らかにし、それとの関係においてバークリの物質否定論の位置を見定めることが試みられた。 本年度後期では、前期の研究を更に進めるとともに、これまでの4年にわたる研究の成果をまとめ、海外での発表に向けて準備を行うことが主眼とされた。研究の一端は、すでに、Yasuhiko Tomida,'Locke, Berkeley, and the Logic of Idealism II',Locke Studies 3 (2003):63-91として公表されている。また、本研究の成果の他の一端は、平成16年4月にオックスフォードで開催されるJohn Locke Tercentenary Conferenceで発表することが主催者より求められ、現在、発表に向けて準備が進められている。
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