研究課題
基盤研究(C)
本研究は、秦漢帝国成立以降、唐・宋代に至る中国軍事思想史の展開について、特に、中華が匈奴・契丹・吐蕃・高麗などの夷狄(異民族)と如何に対立し、また融和したのか、という異文化世界との関係に注目しつつ、研究を進めたものである。当該期間中に於ける主な成果は次の通りである。まず、唐宋代を代表する兵書として、『李衛公問対』『太白陰経』『虎鈴経』の三書に注目した。『李衛公問対』については詳細な校注を作成し、他の二書を含め、「呪術」「合理」「夷狄」などを主な観点として、各々その思想的特質について検討を加え研究論文を発表した。また、敦煌石室で発見された『占雲気書』を兵書という観点から分析し、その占辞の構造や特色、特に五行思想の反映について明らかにすることができた。これらに共通する軍事思想史としての特質は、そこに、『孫子』『呉子』以来、中国兵学の主流を形成していた、合理主義に基づく権謀的兵学と、さまざまな呪術を活用しようとする「兵陰陽」兵学との折衷・統合が見られる点である。これは、中国の兵書が、類書等の影響も受けて大部化して行くとともに、中国兵学そのものが総合化の道を辿ったことを示している。また、このことは、「合理」に徹した『孫子』『呉子』流の兵法が、むしろ突出した存在であり、時代と共に、むしろ「自然」を取り込む方向に展開していった状況を示すとともに、中国が早熟な軍事と兵学の伝統を形成しながら、何故に「科学」的思考を発達させることができなかったのかについても、重要な示唆を与えており、今後の研究に大きな展望を開くこととなった。
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Historical Chinese Persons
ページ: 71-92
Human Being in the Nature, Satomi Gunshi
ページ: 23-33
Memoirs of the Graduate School of Letters Osaka University Vol.40
ページ: 1-26
ページ: 1-40