研究概要 |
1)前年度と同様に『タントラヴァールッティカ』の諸写本によって、その「聖伝章」第4から第6までの三論題の原典再構成を試みた。12年度と同様に諸写本間の多くの異読と、出版本の誤謬を指摘することができたことは大きな収穫である。 2)前年度と同様の注釈類を活用して翻訳を行なった。これらの研究成果の出版は将来の課題であるが、13年度に公表準備が完成したのは、「聖伝章」の論題1(Adhyaya 1,Pada 3,Adhikarana 1)である。この論題1の和訳と研究は西日本宗教学会の研究年報である『西日本宗教学雑誌』第24号(2002年5月刊行予定)に掲載予定で、従来利用されたことのなかった『タントラヴァールッティカ』の写本と注釈類に基づきながらの和訳研究であるので重要な意義をもつ成果と考える。 3)過去10年間行ってきた『タントラヴァールッティカ』の復注Vijayaの出版を続行し完成した。13年度は聖伝章の直後の章「祭名章(Adhyaya 1,Pada 4)」全体の出版を行った。この出版作業により、入手し得たVijaya写本のすべてを出版し了えたことになる。これによりミーマーンサー研究の一段の深化が期待される。 4)13年度は未出版注釈であるTantracintamaniのローマナイズ作業に着手した。この注釈はNyayasudhaほど詳細でなく、Ajitaほどに簡潔ではない中庸を得た注釈と言うことができる。写本はインドのバローダの東洋学研究所(Oriental Instiute Baroda)に世界でただ一本存在するのみである。聖伝章のみのテキストであるこの写本の保存状態は良好である。その重要性に鑑み将来出版されることが期待されるが、このローマナイズ作業の成果は出版の機会が得られた場合に不可欠の資料になると考える。
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