研究概要 |
1)前年度と同様に『タントラヴァールッティカ』の諸写本によって、その「聖伝章」第9論題の原典再構成を試みた。これまでの年度と同様に諸写本間の多くの異読と、出版本の誤謬を指摘することができたことは大きな収穫である。 2)前年度と同様の注釈類を活用して翻訳を行なった。15年度に公表準備が完成したのは、「聖伝章」の論題2(Adhyaya 1,Pada3,Adhikarana2)の定説(siddhanta)前半部分である。この論題2の和訳研究は「西日本宗教学雑誌」第26号(2004年3月刊行予定)に掲載される。従来利用されたことのなかった写本と注釈類に基づく和訳研究であり重要な意義をもつ成果と考える。 3)15年度は14年度に一応完成させた「タントラヴァールッティカ」の未出版注釈の一つであるTantracintamaniのローマナイズ作業において不分明であった写本の問題を解決するため、再度写本の全体のコピーを撮り直して再検討し、より完成度の高いテキストを得ることができ昨年度の懸案を果たすことができた。このローマナイズ作業の成果は出版の構会が得られた場合に『タントラヴァールッティカ」聖伝章研究の不可欠の資料になると考える。 4)「タントラヴァールッティカ」の未利用の写本がオックスフォードのBodleian Libralyにさらに2本存在することが判明した。そのコピーを入手することができたので15年度は前年度に引き続き聖伝章のテキスト批判をそれらによっても行った。「タントラヴァールッティカ」の聖伝章の写本が5本となり、写本の系統の問題も今後の問題として浮上してきた。
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