当該科学研究の二年目である今年度には、『八千頌般若経』の古訳である支婁迦讖訳『道行般若経』のグロッサリー(詞典)と『道行般若経』の校訂注釈本を引き続き執筆した。詞典では、英訳を附し、さらに六種の漢訳異訳、梵本(刊本とアフガニスタンで新たに出土した梵語古写本)及びチベット語訳の対応語を併記した。また、校訂注釈本では、細かく章立てを施し、諸漢訳・梵本・蔵訳の対応箇所を示し、難解な箇所は英訳すると同時に梵本と支謙訳・鳩摩羅什訳の対応箇所を引用した。これらの作業はすでに『道行般若経』全体の40%程度まで進んでいる。この詞典と校訂注釈本が完成すれば、本経は勿論、他の古訳経典をかなり正確に読解できるようになるに違いない。 なお、研究成果の一部分を、四川大学漢語史研究センター刊『漢語史研究集刊』第四輯、『創価大学・国際仏教学高等研究所年報』第五号、『櫻部建博士喜寿記念論集』(京都2002、平楽寺書店)に掲載した。 また、『道行般若経』研究と並行して、支謙訳『大明度無極経』および鳩摩羅什訳『小品般若波羅蜜経』のグロッサリーと校訂注釈本を準備している。執筆はコンピュータ上で行うため、コピー、ペーストを駆使することで、時間を節約できるからである。
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