平成12年度は、年度当初の研究計画にもとづき、(1)ネパール護摩に関する資料収集、(2)ネパール、カトマンドゥ盆地における聞き取り調査、(3)ネパール護摩サンスクリット・テキスト校訂作業の三点を中心に研究を行なった。(1)に関しては、平成12年12月24日から平成13年1月5日までネパールに出張し、カトマンドゥ市およびパタン市において複数の寺院で実際行なわれたネパール仏教の護摩儀礼を写真撮影した。またカトマンドゥ市のアーシャー古文書館において、ネパール護摩のサンスクリット写本コピーを入手し、2000年10月に新たに刊行された護摩儀礼のサンスクリット版本も現地で入手した。さらに国内では、東洋大学(東京)および国立民族学博物館(大阪)に出張し、密教護摩に関する二次文献とネパール護摩写本マイクロフィルムのコピーを収集した。(2)に関しては、ネパール出張の際カトマンドゥ市在住のネパール仏教僧に、以前その僧が護摩を行なった際使用したサンスクリット・テキスト版本に関してそれまでに生じた疑問点を質問しつつ、テキストに記述された儀礼の構造分析を進めた。分析途中ではあるが、研究対象のこの千投奉献護摩は大まかに分けて前半の「瓶供養」と後半の「護摩」に分けられ、前半は「師曼荼羅供養」「三三昧」「瓶の供養」に細分される。また後半は13の次第に細分されることが現時点では明らかになった。(3)のサンスクリット・テキスト校訂作業に関しては、(1)の資料収集で入手した版本、写本をもとに、現時点では基本となるテキストのローマナイズをパソコン入力した。今後はこの基本テキストをもとに複数の写本、版本を比較しつつ校訂作業を進める予定である。
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