平成13年度は、年度当初の研究計画にしたがい、(1)ネパール護摩に関する聞き取り作業、(2)現地での資料収集、(3)文献研究の三点を中心に研究を行なった。(1)に関しては、平成13年7月27日から3週間ネパールに出張し、カトマンドゥ市在住のネパール仏教僧ガウタム・ラトナ・ヴァジュラーチャールヤ氏およびパタン市在住のヘーラカジ・ヴァジュラーチャールヤ氏に護摩儀礼に関して現時点での疑問点の聞き取り調査を行なった。その結果、護摩儀礼に使用される護摩木や供物の種類、使用される器具の形状や名称等が明らかになった。さらに護摩儀礼の構造についても聞き取り調査し、火への供物の奉献、供養、観想法の関連性について考察する材料を得た。 (2)に関しては、昨年に引き続きカトマンドゥ盆地寺院において行なわれている護摩儀礼の映像資料を収集し、また現地に流布する護摩儀礼テキストの写本、版本も収集した。今回収集した写本、版本は本研究で取り上げた「千投奉献護摩」のものもあるが、その他「シラ・アーフテイ(ヒンドゥー神プラフマーの頭を奉献する)護摩」のような他の護摩のテキストもあり、カトマンドゥ盆地で以前から多様な護摩儀礼が行われてきたことが知られる。 (3)文献研究においては、写本を使用してテキスト校訂をすすめる一方、文献から護摩儀礼の構造を明らかにするために、千投奉献護摩で使用された『瓶供養儀軌』の和訳を行なった。和訳に際しては、ガウタム・ラトナ・ヴァジュラーチャールヤ氏およびインド、プーナ市のデッカン・カレッジのマーダヴィー・コラトカル氏にテキストの疑問点を質問しつつ進めた。
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