平成14年度は本研究の最終年度であり、平成12、13年度の研究を基礎に(1)現地調査および(2)文献研究を進めた。(1)の現地調査に関しては、年度当初はインド、マハーラーシュトラ州プーナ市に出張し、ヒンドゥー教スマールタの護摩儀礼を観察・記録する予定であったが、平成14年6月以降インド・パーキスターン対立に伴い外務省より渡航延期勧告が出されていたため、出張先をタイ、バンコク市に変更した。現地においては、ヤワラー地区およびシーロム地区のインド人設立のヒンドゥー寺院にて、儀礼の観察および聞き取り調査を行なった。ヤワラー地区寺院では、朝の勤行、供養を観察した。シーロム地区寺院では、マンリアンマン女神への供養を観察、また護摩儀礼のプロセスに関する情報を得た。以上の内容については、ネパール護摩との比較材料として分析・考察を行なった。 (2)文献研究に関しては、昨年度に引き続きネワール護摩儀軌のテキスト校訂および訳出を進め、その中に現れる観想法の内容についての検討を行なった。テキスト中の観想法の部分については、その構造分析の成果を平成14年6月に韓国ソウル市東國大学校で開催された「韓日共同印度学仏教学会」にて口頭発表し、『印度学仏教学研究』に論文を発表した。テキスト校訂に関しては写本の不完全さなどの理由から終了には今しばらく時間を要するため、成果報告書においてはテキストのローマナイズに儀礼の遂行者であるネパール僧ラトナカジ・ヴァジュラーチャールヤ氏がテキストのネワール語部分をサンスクリツトに訳したものを付加し、使用テキストとして掲載する予定である。また翻訣に関しては報告書の中で護摩のプロセスの説明部分に随時和訳を挿入し、プロセスを明確化する手段として用いる予定である。
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