平成12年度は、ニュートン主義と理神論との関係を中心にして、以下のように研究が進められた。 1.ニュートンの聖書解釈学と歴史神学を、彼の黙示文学解釈(ダニエル書とヨハネ黙示論)を手がかりに分析し、ニュートン的な自然神学がニュートン神学全体の中でいかなる位置を占めるかを明らかにした。 2.ニュートン主義の思想家(ベントリー、クラーク)の自然神学(とくに、神の存在論証)を、原典(ボイル・レクチャーの講義録)によって分析し、ニュートン主義の自然神学が、中世以来のキリスト教自然神学との連続性と、近代的な新しさとの両面を有することを明らかにした。 3.理神論の諸思想家(エドワード・ハーバード、トーランド、ティンダルら)が実定的宗教(伝統的、歴史的、教派的キリスト教)に対して対置する理性的で普遍的な「真の宗教」の内容と、その議論の諸前提に関して、トーランドの『非神秘的なキリスト教』を具体的に分析することによって、解明が試みられた。 4.ニュートンあるいはニュートン主義と思想的に近い関係にあるジョン・ロックの神学思想を、『キリスト教の合理性』によって分析し、それと3に挙げたトーランドの『非神秘的なキリスト教』とを比較することによって、理神論とニュートン主義の自然、神学との相違が、どこにあるかを明らかにした。
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