本研究のプロセスにおいて、生命に対する人間的行為に対する多様な意見の対立の問題が「生命と行為」の根幹にあることをつきとめるに至った。 すなわち、「生命」に対して人間社会はどう向き合うかという「対立と合意」こそ、生命にかかわる倫理的価値の根幹に位置するものと考えることができた。 さらに、「生命」に関する倫理的価値構造の研究の推進過程において、本質的な課題は、社会的合意形成である。 倫理的価値構造の考察においては、生命に対する人間の行為の介入においては、人間どうしの合意形成の問題が本質的な問題であることが浮かび上がってきた。生命の問題においては、人間の社会に発生する意見の相違、論争や紛争といった社会内の対立を克服することなしには、根本的な解決は期待できないからである。 「合意形成」の課題は、「生命」の領域に限定されるものではなく、環境問題を代表として、さまざまな社会的、倫理的な問題領域で重要な課題であることを明らかにすることができた。
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