研究課題/領域番号 |
12610035
|
研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
佐藤 光子 (頼住 光子) お茶の水女子大学, 文教育学部, 助教授 (90212315)
|
研究分担者 |
高島 元洋 お茶の水女子大学, 文教育学部, 教授 (90127770)
|
キーワード | 道元 / 『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』 / 『正法眼蔵隋聞記(ずいもんき)』 / 因果 / 無常 / 日本中世仏教 / 禅 / 仏性(ぶっしょう) |
研究概要 |
本研究は、道元の行為に関する理論を、道元の主著『正法眼蔵』にできるかぎり詳細な注釈を加えることによって解明することを目指すものである。本年度は、行為理論の基盤となる道元の因果観、さらに、因果観を支える世界観としての時間論の検討を研究の中心課題とした。 因果観については、疑問点の多い『正法眼蔵』本文の、校訂、諸異本の校合を、本補助金で購入した諸資料等を使用して、「深信因果」巻、「大修行」巻を中心に行ない本文の確定のための予備作業を完了した。また、道元が『正法眼蔵』執筆の際に参照したと推定される諸典籍を調査し、原典と道元の引用との対照を行なった。 因果観を支える時間論については、仏教的時間論の根底にある無常観が、道元にあってはどのように捉えられているかを、『正法眼蔵』ならびに、道元の言行を弟子の懐弉が記録した『正法眼蔵隨聞記』をもとに解明した。その成果については、佐藤(頼住)光子が、頼住光子という研究名により「無常の思想-道元をてがかりとして」と題して論文発表した。 本論文においては、無常という捉え方の道元における特徴が検討された。その結果、道元の無常観は、仏教一般のもつ無常観に基盤をおきつつ、さらに、その含意する可能性を最大限にまで追求したものであることが明かとなった。特に、道元が『正法眼蔵』「仏性」巻で展開した「無常仏性」という思想の中に、さとりの一瞬を有限な自己の内に、無限の永遠の宿る瞬間としてとらえる道元の根底的な時間把握が展開されていることが確認され、道元の因果観、行為(修行)理論の解明の基礎が据えられた。
|