研究課題/領域番号 |
12610035
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
佐藤 光子 (頼住 光子) お茶の水女子大学, 文教育学部, 助教授 (90212315)
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研究分担者 |
高島 元洋 お茶の水女子大学, 文教育学部, 教授 (90127770)
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キーワード | 道元 / 正法眼蔵 / 因果 / 「百丈野狐」 / 「大修行」 / 「深信因果」 / 時間論 / 十二巻本問題 |
研究概要 |
本年度においては、道元の行為理論を検討するにあったって不可欠の「因果」概念の解明を行なうために、『正法眼蔵』の関係諸巻を、詳細な注釈作業を行ないながら解読した。とくに、道元自身が因果を考える際に重視した「百丈野狐」の公案(修行者が参究すべき、高名な禅僧の言行のこと)について中心的に言及している「大修行」巻(七五巻本所收)、「深信因果」巻(一二巻本所收)について、注釈作業を行なった。 解釈の確定の際には、『正法眼蔵』における用例を重視し、道元の特異な用語法を考慮することに留意した。両巻ともに、現在、諸種の注釈、たとえば、道元の直弟子が著わした『御聴書抄』をはじめ、江戸時代にいわゆる眼蔵家によって宗学として行なわれた諸注釈、近代になってテキストクリティークの手法を取入れつつ行なわれた諸注釈など、多くの注釈が刊行されているが、思想構造を明らかにするという観点から、統一的視点によって、しかも用例を参照しつつ語義を十分検討した上で行なわれている注釈は、非常に数が少なく、それも多くの問題点を含んでいる。 このような現状を考慮し、本研究では、一方で思想構造という統一的解釈を打ち出しつつ、他方、一つ一つの語義や、文脈を用例的に検討し、従来の諸注釈を批判的に吟味しながら、「大修行」「深信因果」巻の解読を行なった。その結果、道元の特異な因果観、行為観、さらにその背後にある、時間観、修行観、真理観、言語観が解明され、従来とは違う新たな読みの方向が示された。また、昨今、学界で大きな問題となっている一二巻本問題についても、思想構造との連関から新たな視点を提示した。これらの研究成果について、一部、論文等で公開した。
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