平成12年度の史料調査を前提に、本年度はその活用を目指した。研究成果として、まず秋田藩の東照宮に関する論文を一つ仕上げた。 ところで、その作成作業を通じて感じられたのは、幕府の東照宮政策や寛永寺教団の動向に関する調査の重要性であった。藩の独自性考察は言うに及ばず、それ以前に、個別の人物や事件の事実確認の段階から、そうした側面の基礎知識が欠かせない。既に昨年度から分かつていたことではあるが、ますます痛感させられた。その観点から、多少奥羽地域からは離れるものの、幕府の東照宮祭祀(特に年忌儀ネL)、寛永寺教団と増上寺教団との対抗関係、などに調査を広げた。 結果として、前記の秋田藩関連に加え、祐天(1637-1718)を中心とした増上寺教団の動向に関する論文を一つ完成させることができた。また、昨年度の成果である徳川家康年忌儀ネL関連の口頭発表に加え、天海の思想面での後継者である乗因(1682-1739)に関して口頭発表を行うことができた。 さらに、家康年忌儀礼関係の史料として、独立行政法人国立公文書館、島原図書館、叡山文庫、九州大学の所蔵史料14点を翻刻した。加えて、「東叡山子院現住法脈記」(『天台宗全書24所収)と「東叡山寛永寺子院歴代主僧記』(『戸隠』(二)<続神道大系神社編>所収)の人名をもとに「寛永寺関係人名一覧」を作成した。これらは今後、幕府の東照宮政策や寛永寺教団の動向調査の上で、大いに活用されることが期待される。
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