今年度、「11.研究発表」に列記した5本の論文を発表した。「『元三大師御鬮諸鈔』 考」「元三大師御籤本の思想」「日本文化教育実践試論」は、主に昨年度の当該研究によって得られた知見に基づいて作成したものであるが、「おみくじと天道」および「朱震の易学」については、今年度の当該研究によって得られた知見に基づくものである。特に、「おみくじと天道」においては、日本思想史研究の一大論点であった天道思想について、新しい知見を提示した。これまで、「天道」とは、不可視の抽象的な概念であることが前提として論じられてきたが、「天道をいのる」「天道をまつる」といった場合の信仰対象としての「天道」とは、「お天道さま」すなわち太陽のことであったということを、日本における霊籤の受容に関わる資料によって明らかにした。つまり、日本の近世においては、太陽を「天道」と呼び、これを祈念する天道観と、「天道」を不可視、不可測の理法とする天道観の両者が対立しながらも、並存していることを指摘した。また、今年度、日本における『老子』『荘子』の思想に関しては、金子みずゞ、西岡常一らの思想に、その受容と展開の様相を看取できるという知見を得たが、これらのことも含め、今年度および昨年度の当該研究によって得られた日本における『老子』『荘子』の受容と展開に関する知見については、来年度、著書として出版することを予定している。なお、今年度、論文による研究発表以外に口頭発表として、次の発表をおこなった。「おみくじ再考」(2001年7月22日・江戸町人研究会)、「おみくじと漢詩」(2001年11月3日・あいち国文の会)、「おみくじと太陽信仰」(2002年3月17日・江戸町人研究会)。
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