日本における死の受容-文学・仏教・キリスト教信仰にみる看取りの様態-

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12610048
• 研究機関: 東洋大学
• 研究代表者: 高城 功夫 東洋大学, 文学部, 教授 (90058149)
• 研究分担者: 川崎 信定 東洋大学, 文学部, 教授 (00072538) ; 大久保 廣行 東洋大学, 文学部, 教授 (40073928) ; 伊藤 宏見 東洋大学, 文学部, 教授 (70109578) ; 清水 乞 東洋大学, 文学部, 教授 (20058001) ; 神作 光一 東洋大学, 文学部, 教授 (70057983)
• キーワード: 生死 / 仏教 / 国文学 / ヒンドゥー教 / キリシタン文化

研究概要

本研究は、文学・仏教・キリスト教の各専門分野から、日本における死の受容の歴史的変容を探究することを目的とする。平成12、13年度の2年度にわたり、東洋大学附置東洋学研究所を研究拠点とし,文学においては上代・中古・中世・近代の領域で「死の受容」をテーマとして文献研究及び実地踏査を行い、仏教においては天台・真言・浄土教などの立場からの文献研究および資料調査を行う。キリスト教では、日本文学とキリスト教との関連性の研究、キリシタン信仰の実地調査を重点的に進めていく。また、インド・チベット仏教やヒンドゥー教と日本仏教との比較考察、ターミナルケア、グリーフ・ケアの理念と日本文学・日本仏教との連関を探究する。
第1年度にあたる平成12年度は『滅びと異郷の比較文化』、『中世村落と仏教』、Ritual,State,and History in South Asia等の研究資料を考察し、研究調査として、研究代表者および研究分担者がそれぞれの研究分担課題に基づいて、京都(鳥辺野・島原ほか)、伊勢(斎宮周辺・金剛証寺ほか)、四国(善通寺周辺・松山浄瑠璃寺ほか)神戸市・明石市(須磨寺・忠度塚人丸神社ほか)、奈良(大上神社・当麻寺ほか)、和歌山県(海南市・南部町ほか)、大阪(曾根崎・住吉ほか)、長崎(浦上天主堂・キリシタン医療施設跡ほか)の調査を行った。
以上の資料研究および調査から、次のような成果を得た。一つは他者の死を看取りつつもいずれは死に逝く者の死に直面する姿をいかに受けとめるか、という問題についての背景を探る手がかりを得たこと、もう一つは葬送儀礼や墓制のあり方を通じての看取りの様相を一部分ではあるにせよ垣間見たことである。こうした成果を踏まえ、次年度は研究調査の更なる促進と総合のもと、ヒンドゥー教における葬送儀礼と日本における看取りの様態との比較研究、ターミナルケアやグリーフ・ケアにおける日本的な死の受容のあり方等を探っていきたい。

研究成果

• [文献書誌] 伊藤宏見: "草木成仏について(人)-中心寛範上人の大経要義鈔-"東洋学研究. 38. 1-12 (2001)
• [文献書誌] 大久保廣行: "天平二年筑紫の文雅"文学・語学. 167. 1-13 (2000)
• [文献書誌] 大久保廣行: "綿と紫草-筑紫文学圏の背景-"文学論藻. 95. 1-20 (2001)
• [文献書誌] 大久保廣行: "世間の住み難きを哀しぶる歌"セミナー万葉の歌人と作品. 5. 80-96 (2000)
• [文献書誌] 川崎信定: "善巧方便と智慧"加藤純幸博士還歴記念論集・アビダルマ仏教とインド思想. 237-250 (2000)
• [文献書誌] 菅沼晃: "菩薩とは-その誓願と修行"大法輪. 7. 74-77 (2000)
• [文献書誌] 菅沼晃: "シャカ族滅亡物語における非暴力の意味"高木〓元先生古稀記念論集. 1-20 (2000)
• [文献書誌] 竹内清己: "三島由紀夫『英霊の声』"国文学 解釈と鑑賞. 65巻11号. 117-122 (2000)
• [文献書誌] 田村晃祐: "永遠なる救いを求めて-旧仏教と新仏教の対立-"別刷歴史読本 親鸞・道元・日蓮. 64-69 (2000)
• [文献書誌] 橋本泰元: "ヒンドゥー教における葬儀と霊魂観(下)-祖霊祭の構造"仏教教育 人間の研究-斎藤昭俊教授古稀記念論文集. 735-754 (2000)
• [文献書誌] 山崎中一: "また見た事のない鳥-漱石の批評行為ということ"文学論藻. 75. 104-121 (2001)
• [文献書誌] 渡辺幸悟: "インド仏教の法滅思想II"東洋大学文学部紀要. 54. 85-100 (2001)
• [文献書誌] 神作光一: "新勅撰和歌集全釈三"風間書房. 305 (2000)
• [文献書誌] 高城功夫: "丙行の研究-伝本・作品・享受-"笠間書院. 550 (2001)