研究課題/領域番号 |
12610050
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
太田 義器 摂南大学, 国際言語文化学部, 講師 (10277858)
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研究分担者 |
吉田 容子 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (70265198)
佐藤 正志 摂南大学, 経営情報学部, 教授 (50231345)
石崎 嘉彦 摂南大学, 国際言語文化学部, 教授 (80232289)
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キーワード | 社会変動 / エートス / 儒教倫理 / 正義 / 市民社会 / 正戦論 |
研究概要 |
本研究は、社会変動とエートスの相関関係を明らかにすることを目的にしていた。本研究によって明らかになったのは、第一に、何らかの社会変動があるとき、それは特定の社会にあらかじめ内包されていたエートスに規定されて方向付けられていくという一方的な関係にあるのではないということである。このことは、佐藤がいわゆる儒教資本主義論を日本の歴史的実態に即して検討し、日本の勤勉観が儒教倫理に由来するよりも、むしろ企業活動の中で生み出された側面が強いことを明らかにした研究において具体的に示されている。 第二に、本研究によって明らかになったのは、今日の社会変動を方向付ける新しいエートスとして正義観に着目することが有益であるということである。このことは、太田による今日のグローバリゼーションを前提に、正戦論が理論的には通時的にみて比較的安定しているにもかかわらず、その適用においては変動が見られることを示した研究、および石崎による市民社会に関する古代と近代の比較を通じて、同じ正当性という枠組みのなかで古代において重視されていた徳目が近代においてはその重要性を低下していることを解明した研究によって具体的に示されている。 研究成果を総じて言うならば、社会の歴史的変動とエートスとの関係について、原理的には、次の時代の支配的なエートスになる新しいエートスは社会の変動のなかから言わば自生的に生まれてくるが、その一方で、そうした新しいエートスが定着する上では、ある段階での人為的な、あるいは主体的な動きが不可欠であるということが明らかになり、現象面では社会変動に応じてエートスの変化はさまざまな現れ方をするが、それはいつの時代にも正義観において言わば凝縮的に表現されていることが明らかになった。
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