研究概要 |
中世ヨーロッパの神学を、とりわけサン・ヴィクトール学派の修道院神学について研究することが、この研究の目的であるが、平成13年度の研究の範囲内では、中世を代表する神学者であり、サン・ヴィクトール学派から大きな影響を受けた13世紀のトマス・アクィナスの思想に見られる「修道院神学」の研究において、研究成果を発表することができた。トマスはその著書『神学大全』の第II-2部第179問題から第182問題において、「観想的生活」と「活動的生活」の問題を扱っているが、この「観想的生活」とは、具体的には修道院で行われる修道生活のことである。平成13年度には、この部分を含む第171問題から第182問題までを、稲垣良典教授(長崎純心大学)との共訳で訳出し、出版した。それとともに、トマスにおける観想的生活と活動的生活の問題を論じた論文を、『自然法研究』叢書第7号(自然法研究会発行/代表・水波朗九州大学名誉教授)『自然法と宗教II』に掲載した。 サン・ヴィクトール学派そのものの研究においては、サン・ヴィクトールのフーゴーの主著『キリスト教信仰の秘儀』(De sacramentis christianae fidei)の読解を、R.J.Deferrariの英訳の助けを借りて継続している。同時に、Wendelin Knock, Die Einsetzung der Sakramente durch Christus, SS.73-145, Hugo von St. Viktor und die Viktorinerschule(サン・ヴィクトールのフーゴーとサン・ヴィクトール学派)が、この方面における重要な研究であることから、それを翻訳したが、これについてはまだ発表の見通しがついていない。
|