研究概要 |
サン・ヴィクトール学派を代表する神学者フーゴーHugo de Sancto Victore 1096-1141の主著『キリスト教信仰の秘儀』(De Sacramentis Christianae Fidei)の読解を中心に研究をすすめた。特にフーゴーの三位一体論について、Johann Hofmeier, Die Trinitatslehre des Hugo von St. Victor, Munchen 1963を手引きにしつつ学んだ。フーゴーの三位一体論は、あらゆる意味で過渡的なものであり、ボエティウスからトマス・アクィナスに至る三位一体論の発展史の中に位置づけられるのであるが、そこには特有の神秘的解釈があり、西欧の精神史の中でこれまでには注目されてこなかった重要な位置を占めるように思われる。この研究成果は平成15年度中に学会、雑誌または紀要で報告したい。 フーゴーを含むサン・ヴィクトール学派全体に関わる研究については、基本的なテキストとして、ルーヴァン大学からCetedoc Library of Christian Latin TextsがCD-ROMの形で出された(第5版)ので、それを購入し、その中で特にサン・ヴィクトール学派に関わる神学者たちの著作を抜き出し、アンソロジーを作成中である。これは、今後の研究の基礎資料となる。 中世におけるユダヤ教哲学とそのキリスト教神学への影響を、12世紀の修道院神学との関わりで検討するという、第三のテーマについては、欧米でもその分野の研究が少なく、基礎的な資料も不足しているために、まずキリスト教とユダヤ教の内的結びつきについて一般的に研究している最中である。この関連でE.Busch, Unter dem Bogen des einen Bundes, Karl Barth und die Judenを分担翻訳し、2002年10月新教出版より上梓した。
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