本年度は、4年間の研究の最終年度にあたったので、これまでの研究成果を報告するべき年度であった。研究の主要な目的は、サン・ヴィクトールのフーゴー1096-1141と、彼の弟子であるリカルドゥス、アンドレアス、アダム、ゴドフリドゥス、アカルドゥスたち、後に「サン・ヴィクトール学派」と呼ばれる神学者たちの思想を把握し、彼らに共通する特徴と、大きな共通性の内部での相違を確かめることであった。 しかし、研究年度の範囲では、残念ながち所期の目的を到達することはできなかった。フーゴーの思想については、彼の主著である『キリスト教信仰の秘儀』De sacramentis christianae fideiの読解をほぼ終了した。今後機会を得て、訳注を付しながら順次公表していきたい。その手始めとして、フーゴーの生涯について現在入手できる限りの資料にあたって調べ、「サン・ヴィクトルのフーゴー、その生涯」と題して、『西南学院大学神学論集』に掲載した。 リカルドゥスの『三位一体論』についても、フーゴーのそれとの比較において、何らかのまとめをすべきであるが、これについては二人の相違が想像以上に大きく、彼らに共通する「サン・ヴィクトール学派」の特徴というべきものを、まだ見出せないでいる。 アンドレアス以下の弟子たちについては、まだ本格的に手をつけるまでに至っていない。 平成15年4月に、私はそれまで11年間勤務した西南女学院短期大学を離れて、西南学院大学神学部に移った。新しい研究環境を整えることに平成15年度は腐心したが、今後はこれまでの成果を公表することに精力を注ぎたいと思う。
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