本研究において一年目(2000年度)は準備期間としてメディアアート及びテクノロジーと関連の深い現代美術の調査を行った。それと同時に、日本初の国際現代美術展「横浜トリエンナーレ2001」のキュレータ河本信治氏から、同展覧会に現代美術家・椿昇とともに作家としての参加を求められる機会があり、一年目から二年目にかけて、作品「インセクト・ワールド」の構想および制作に関わった。この作品は同展で大きな話題を呼び、テレビ、新聞、雑誌などに数多く紹介されたほか、メインとなる作品である全長50メートルに及ぶ巨大なバルーンアート「飛蝗」は水戸芸術館、金沢市民芸術村などを巡回することになった。メディアアートや現代美術に関する各地での調査や文献調査の成果は三年目の研究成果として研究報告書に反映されている。一方、論文以外の成果として、リストにも掲載してあるように複数の美術館、公的機関、学会などにおける招待講演、雑誌記事などがある。今回の研究では主としてテクノロジーと深く関わる現代アート、メディアアートに調査の焦点を絞ってきたが、今後は現象としての美術作品だけではなく、それを支えている制度や言説装置全体、アーサー・ダントーらが言うところのいわゆる「アート・ワールド」にも視野を広げて研究を続行して行きたいと考えている。それと共に今回やや不十分な点があった国外でのさまざまなテクノロジーとアートの関係を調べていきたいと考えている。
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