本年度は、データ収集とデータ整理とを等分に見すえながら、次年度に研究成果をまとめ上げるための理論的・歴史的な探求を心がけた。データ収集については、美術・映像関係と、パフォーマンス関係とに、特に意をそそいだ。データ整理については、研究のための理論的な枠組の問題ともかかわらざるをえないため、仮説をたてながらの整理を試みた。活人画が歴史の舞台から消滅するに当たっては、写真と映画という映像ジャンルの登場と、密接な関連があったものと思われる。したがって、19世紀から20世紀にかけて、写真や映画が、どのように活人画的なものを吸収したのかを、まず問う必要がある。データの整理に当たっては、そのような問題設定を考慮することになった次第である。また、もっと長い歴史的なスパンにおいて、舞台芸術にも、活人画的な場面が見出されるため、舞台との関連も考慮せざるをえない。美術との関係では、額縁と台座という、絵画と彫刻の要素が、活人画に用いられるため、そういった要素からの研究も、視野に入ってくる。 映像、舞台、美術という、これら3つの枠組は、活人画研究にとって、十分に有効であり続けるだろう。しかし、問題は、化粧やモードの世界、見せもの芸の世界、さらにはスポーツの世界にも、活人画的なものが見いだされることである。こういった整理しにくいものとの関わりを、どのような理論的な枠組で説明できるのか。そのような課題も残されたのである。
|