本年度は、研究の最終年度に当たるため、これまで収集したデータを生かしつつ、研究をまとめることに力をそそいだ。ただ、その一方で、新しいデータの収集にも配慮すべく、可能な限り、国内での調査旅行も行なった。研究をまとめる方向としては、次の六つの軸を立てることにした。 (1)活人画の歴史 主に西洋中世末期以後の活人画の歴史を扱う。 (2)映像 主に映画映像のうちに現われる活人画的なものを扱う。 (3)絵画 過去の名作、モチーフ、額縁など、絵画の枠組みとの関連で、活人画的なものを扱う。 (4)彫刻 過去の名作、モチーフ、台座など、彫刻の枠組みとの関連で、活人画的なものを扱う。 (5)舞台 演劇や舞踊など、広義の舞台芸術に現われる活人画的なものを扱う。 (6)身体 見世物や化粧術から現代美術のパフォーマンスにいたるまで、幅広く見出される活人画的なものを扱う。 以上の軸に沿って研究してみて、活人画的なものの広がりと奥行きとに、当初の予想をはるかに超えて、気づかされた次第である。活人画的なものは、本来は自由に動かせるはずの身体を静止させ続けることを意味するのだから、そのような行ないの意味について、さらに深く探りを入れる必要も、研究の過程で痛感することにもなった。精神医学など、他領域の研究を生かすことも、今後の課題とされるように思う。
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