本研究「西洋の工芸博物館の比較研究-デザインミュージアムの原型・日本の博物館の史的モデルとして」は、ロンドンのサウス・ケンジントン博物館(現ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館)とおもにドイツ語圏の工芸博物館、および日本の美術館・博物館構想の一翼を担った岡倉天心、そして民衆的な工芸博物館の創設を提唱し、自ら日本民藝館を創設した柳宗悦を対象に行われた。 サウス・ケンジントン博物館に関しては、19世紀中つまりヴィクトリア・アンド・アルバート美術館と改称する以前に同館で開催された展覧会の内容を把握するとともに、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館となってからの工芸とデザインに関する活動の変遷を調べた。1989年にロンドンのサウス・バンクに開館したデザイン・ミュージアムとヴィクトリア・アンド・アルバート美術館との歴史的、組織的関係も確認することができた。またドイツ語圏主要都市の工芸博物館とサウス・ケンジントン博物館との関係についての調査も実施し、論文や著書として発表する準備を進めている。 柳宗悦を中心とした民芸運動の思想とイギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動のそれとの相違を確認し、各種学会誌等にその成果を発表した。また、明治時代に日本の美術館・博物館構想の一翼を担った岡倉天心の工芸思想についても国際学会で研究発表を行った。
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