1.1914年秋に伊藤道郎がロンドンの社交界にデビューした経緯について、画家オーガスタス・ジョンとアルバロ・ゲバラの関係資料を追ったが、新しい情報は得られなかった。 2.1915年秋に伊藤がロンドンのメルバリー・ロードで行った3回の小リサイタルについて、当時同地にスタジオを持っていた人々の名前までは調査できたが、伊藤がどのスタジオを用いたのかまでは特定できなかった。 3.ニューヨークにおける「鷹の井戸」の再演について、演出家ジョン・マレー・アンダーソンと彫刻家イサム・ノグチの関係からは新しい情報は得られなかった。今後はユウジ・イトウ関係資料を調査する予定である。 4.ミチオ・イトウ同門会所蔵資料を閲覧した結果、1916年に美術家エドモンド・デュラックが伊藤の姿を描いた油絵(これまで行方不明とされてきた)が東京に現存することが判明した。 5.ニューヨークにおける初期の伊藤の活動についてイサカ・カレッジのDavid Pacun助教授と情報交換を開始し、幾つかの新資料と情報を収集した。特に、ニューヨーク時代には複数の写真家による写真が現存することが判明した。 6.伊藤がロンドンとニューヨークで接触した画家、久米民十郎と川島理一郎の研究者と情報交換することができた。 以上のように、本年度は計画していた資料調査ではあまり成果が上がらなかったが、複数の他の研究者との協力関係を基にして、新しい情報と資料を得ることができた。これまでに判明した伊藤の初期の活動の全容については、まず日本語で研究成果報告書にまとめ、その後、Pacun助教授との協力関係の下に英語論文としで発表する予定である。
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