初めに宮廷関係のベラスケス資料を読み進めるうち、1635年前後の活動において注目すべき問題が浮上してきた。ブエン・レティーロ離宮に設営するための、巨大なブロンズ製フェリペ4世騎馬像の制作をめぐって、である。画家ベラスケスと彫刻家モンタニェースが協力体制を組み、フィレンツェの彫刻家ピエトロ・タッカに依頼することになるが、このプロジェクトは天文・物理学者ガリレオ・ガリレイをも巻き込み、後脚のみで立つ困難なポーズのバロック的騎馬彫到(等身大を優に超える)を実現させたのである。 そこには騎馬像のポーズや鋳造技術をめぐって様々な議論が生まれ、結局は16世紀的パラゴーネ(西語ではパランゴン)を超えた新しい時代の登場を予感させる。 第二の問題は、スペイン・ハプスブルク家型宮廷肖像の成立と伝統、さらにベラスケスによるその革新をテーマとして調査、研究を続けた。その成果の前半は2002年3月から始まったプラド美術館展の図録に論文として寄稿した。その後半となる論文を現在、準備中である。 今後のテーマはトーレ・デ・ラ・パラーダの絵画装飾とその意図をめぐってであり、原資料を収集中の段階である。さらにベラスケスと二度のイタリア旅行、についても論文を準備中である。
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