1.古代地中海世界から中央アジアにかけてのコリントス式オーダーのデータ・ベースを作成した。これら約400点の事例を纏めることにより、同オーダーの理解と、その造形を通しての古代地中海世界国際関係の解明の為に、下記5つの観点が重要であることが判明した。それらに関し以下の研究を行いその成果の発表を行った。 2.コリントス式として神殿外部に初採用されたアテナイのオリンピエイオンの柱頭は、その完成度と華麗さ故にギリシア建築からローマ建築への造形伝播の要となり、以降現代までの建築へ大きな影響を与えた。この神殿を特にそのローマ人建築家コッスティウスの設計能力に注目して建築史の中に位置づけた。4月20日に建築史学会全国大会発表で発表した。 3.オリンピエイオンの柱頭はギリシア世界でのコリントス式の完成例である。この柱頭を、ギリシア世界の小アジアの柱頭及びエピダウロスのトロスの柱頭と、ローマ世界のウィトルウィウス『建築十書』の「カノン」と比較して、その造形的本質と、ギリシア・ローマ国際関係の一側面を明らかにした。5月25日に美術史学会全国大会で発表し論文に纏めた。 4.東西文明の交差点キリキア地方は従来研究が等閑視されてきた。同地方オルバのゼウス神殿のコリントス式柱頭の造形の考察を通し、この地に於けるセレウコス朝とプトレマイオス朝の国際関係を明らかにした。6月22日に地中海学会全国大会で発表し論文に纏め、その第1部は発表予定で第2部は同学会誌に投稿中である。 5.プロピュロンにコリントス式柱頭を有するミレトスのブーレウテリオンを国際関係の中に初めて位置づけた。7月6日にヘレニズム・イスラーム考古学研究会で発表し論文に纏めた。 6.コリントス式柱頭を有する上記のブーレウテリオンをミレトスの格子状都市計画の中に位置づけ、ヒッポダモス式都市計画について新知見を得た。この研究を論文に纏め発表した。
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