12年度からの継続2年目。今年度は中国南宋時代木彫仏像との関連が密接である、日本禅宗木彫仏像について、集中的にX線写真資料を収集することに努めた。日本禅宗彫刻の主要資料を体系的に伝存している、石川県羽咋市永光寺の禅宗木彫仏像11体を正面・側面の二方向からX線透過撮影して、内部構造の透視観察を進め、内刳技法等について中国請来木彫仏像との比較検討を行うための基礎資料を収集した。 X線透過撮影した永光寺の禅宗木彫仏像は1 釈迦如来坐像(鎌倉時代・像高73)、2 観音菩薩坐像(鎌倉時代・像高36)、3 虚空蔵菩薩坐像(鎌倉時代・像高36)、4 達摩大師坐像(鎌倉時代・像高68)、5 大権修利菩薩倚像(鎌倉時代・像高72)、6 聖僧文殊菩薩坐像(鎌倉時代・像高57)以下の計11体で、フイルム原板にして135枚になる。これらは、日本曹洞宗の開祖道元が、中国江南地方より日本に請来した南宋仏像美術を典拠とする木彫仏像であるから、そのX線写真は中国請来木彫仏像の日本木彫仏像への影響を科学的解明に重要な意義がある。 また鎌倉時代宋風檀像彫刻の重要資料である、兵庫県宝塚市中山寺所蔵の十一面観音像について初めてX線透過撮影し、像内納入品の検出に成功した。X線写真によって捉えられた本像納入品には、頭髪の束と想定されるものが含まれており、鎌倉時代の造像背景を解明するための重要な基礎資料として注目されるので、このX線写真は早急に発表するべく準備を進めている。
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