研究概要 |
本年度では、高活動の諸問題に焦点を合わせながら、心的諸機能の統御の性質がどのようであるかを検討した。まず、統御の機構を脳生理学的な知見に照らして論及を試みた。次いで、主として生理心理学の領域で得られた活性化効果に関する研究をとおして、末梢および中枢機構について概観した。 生理的活動と身体表出との関係を検討した結果、双方の活動には必ずしも正の相関は見られず、しばしばその逆の関係すらあることを指摘した。そして、このような知見を踏まえれば、高活動には少なくとも2つを区別すべきであるとした。一つは生理的高活動であり身体活動の高賦活状態である。もう一つは外顕的にとらえられる表出行動などの行動的高活動である。多動はこの後者に入る高活動である。生理活動と外顕的行動とは通常正の相関を示すと思われるが、自律神経活動と表出行動に関する研究などは、その関係が単純ではないことを示唆している。しかし,本研究をとおして、自然発症高血圧ラットSHRの行動にしても、注意欠陥多動障害ADHD児の行動にしても、行動修正のために環境要因を考慮できる可能性のあることを明らかにすることができた。この研究では、児童に適用可能で簡便な動作検査を試作して適用した。これらの経験を踏まえて、かなり広範な年齢段階の人に適用可能な、注意持続や感情の統御の様態を簡便にとらえるためのPCプログラム開発を行った。これにもとづく本格的資料収集を次年度の課題の一つとしている。 また、本年度においても、高活動に関連した不安全行動の基本的特徴を、自動車運転事態で生じる、ドライバーの運転作業負荷増加をもたらす道路環境の画から考察を加えた。
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