本年度も前年度に引き続いて、高活動にともなう心的諸機能の統御がどのような修正を受けて不安全行動傾向が生じるかを、健常者や健常状態と比較しながら検討した。特に、昨年度にこれら一連の研究で基本となる体内インターバルタイマーの働きをするための動作検査器具を試作できたことから、これを主として幼児に適用し、その特有の高活動状態と発達の過程を詳細に調べた。体内インターバルタイマーの働きは、内言語の発達とあいまってさまざまな動作調節に重要な役割を果たしていると推定できる。高活動はこの働きが促進されていると推定し、一般に幼児が示す高活動行動の時間調節の性質を64名から資料を得て明らかにできた。 また、高活動の対極的な脳機能状態にあると予想される高齢者や運動性失語症患者からもデータを収集することに努め、脳活動との関連を推定した。このような脳機能低下の状態は、外来刺激に同期させる作業にエラーの生じることが判明した。その理由として、注意機能が低下し体内インターバルタイマーの働きが抑制されたためであると考えた。 さらに、不安全行動との関連では、その基本的特徴を自動車運転事態で生じる、ドライバーの運転作業負荷増加をもたらす走行条件を設定して考察した。特に車間距離を短縮させ不安全行動を実験的に操作した場合には、心拍で推定した身体負荷が増大することが分かったが、個人差も認められた。なお、追加的な研究として、香りが活動状態の安定化に及ぼす効果を精査して、活動状態の統制のあり方を検討する基本的な資料も得ることができた。 以上は、学会で逐一報告してきているが、幼児での実験や運転事態でのデータ処理がほぼ終了したので、これについてはすみやかに論文化して公表する。
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