最終年度として、主としてこれまでの研究を整理し、成果を公表することに努めてきた。主な研究の検討事項は次の通りである。 1.高活動にともなう心的諸機能の統御がどのような修正を受けて不安全行動傾向が生じるかを、健常者や健常状態と比較しながら検討した。 2.一連の研究で行動発現の基本となる機構のうち、体内インターバルタイマーの働きに注目し測定のための動作検査器具を試作・改良を加え、公表してきた。 3.幼児での研究では、その特有の高活動状態と発達の過程を詳細に調べた。体内インターバルタイマーの働きは、内言語の発達とあいまってさまざまな動作調節に重要な役割を果たしていると推定できた。 4.高齢者や超皮質性失語症患者から得た資料を基に、脳活動と体内インターバルタイマーの働きについて考察を加えた。このような脳機能低下の状態は、動作検査器具を用いて推定することができた。それらの結果から、注意機能が低下することが認められ、それによって体内インターバルタイマーの働きが抑制されると推定した。 5.不安全行動との関連では、その基本的特徴を自動車運転事態で生じる、ドライバーの運転作業負荷増加をもたらす走行条件を設定して考察した。特に車間距離を短縮させ不安全行動を実験的に操作した場合や、運転中のドライバーへ聴覚作業負荷を与えた場合などで観察した結果から、心拍などで推定した身体負荷が増大することを明らかにした。活動性についての個人差や、身体負荷評価と主観的評定との間の違いも認められ、これらについても検討を加えた。 6.追加的な研究として、香りが活動状態の安定化に及ぼす効果を精査した。これらは活動状態の統制のあり方を検討するための基本的資料であり、不安全行動の改善策の一つとして将来の応用が期待されるものである。
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