本研究は、大学生や幼児の高活動性傾向を検出し、その行動特徴を探求するものであった。そのために有効な独自に考案した動作検査法を用いた。これにより、彼らの注意の持続や衝動的動作の資料を収集し、表出行動面と体験的な面との複雑な関係の解明にあたるとともに、観察される反応の3側面の相互関係に留意して、高活動傾向者の不安全行動の性質を明らかにしようとした。以下は結果の要約である。 1.一連の研究から、行動発現の基本となる機構として、体内インターバルタイマーに留意し、その働きを推定するための動作検査器具を考案した。それを用いた幼児の研究では、内的タイマーは内言語の発達とあいまって指での動作調節に重要な役割を果たしていると推定できた。 2.高齢者や超皮質性失語症患者からの資料をもとに、脳活動と内的タイマーの働きについて考察を加えた。注意機能低下との関連を推定した。 3.自動車ドライバーの不安全行動の背景にある仕組みを探るため、車間距離を短縮させたり、運転時にドライバーに対して聴覚作業課題を付加することを試みた。これらから、交感神経活動の高まりと運転作業の質的低下が認められた。 4.追加的な研究として、香りが活動状態の安定化に及ぼす効果について検討を加えた。なお、これらは高活動状態の統制のあり方を検討するための基本的資料であり、不安全行動の改善策の一つとして将来の応用が期待されるものである。
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