平成13年度には、まず平成12年度のデータを分析し、さらにデータを補充することとした。平成12年度に続き、帝王切開後3時間の胎児を母乳群、羊水群、生理食塩群、蒸留水群の4群に分け、その行動を、ベースラインセッション・体毛ブラシでのにおい提示セッション・体毛ブラシによる口周辺部刺激セッションでおのおの3分間記録した。体毛ブラシでのにおい提示とは、体毛で作ったブラシに母乳・羊水・生理食塩水・蒸留水を浸し、そのにおいを被験体の鼻先に提示するものであり、口周辺部刺激セッションとは、これらの刺激に浸したブラシで口周辺部を刺激することである。その結果、羊水がもっともにおいによる刺激効果が高く、他の刺激はいずれも低かった。口周辺部の刺激効果では、羊水がもっとも刺激効果が高く、次に初乳となった。生理食塩水と蒸留水の刺激効果はともに低くなった。 第2に、分娩後2日〜3日の母乳の刺激効果を比較したところ、初乳の刺激効果がもっとも高かった。初乳は、胎児にとって行動を活性化するためのきわめて大きな効果を持っていることが明らかになった。 第3に、母親の体毛と雄の体毛との刺激効果を口周辺部の刺激によって比較したが、胎児の行動に差は認められなかった。また、胎児は、母親の体毛と雄の体毛のにおいを区別してはいなかった。これらのことは、体毛そのものによる口周辺部への刺激が重要であることを示すものであると同時に、出生直後の新生児にとっては、自分に接触する体毛刺激であればそれへ定位しようと行動することを示すものである。 現在は、これらのデータの補充を行い、さらに母乳の反復提示に対して胎児が活発に反応するか否かを検討しようと計画したところである。
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