研究概要 |
本年度の研究実績は、文献研究と実験的研究に分けられる。 1.文献研究については、乳児を対象とした事物のカテゴリー概念の発達に関する近年の実験的研究の潮流を概観し、その幼児研究への意味合いを指摘した(落合正行・土居道栄編「知識と表象の発達(仮題)」培風館所収予定)。つづいて、幼児を対象とした発達研究を評論し、幼児は分類学的概念とスキーマ的な概念を共に理解しており、それらを課題の文脈に応じて柔軟に切り替えて利用しうるという本研究の仮説が導かれる背景を提示した(湯川,印刷中)。 2.実験的研究については、上記仮説を検証する2つの実験が行われた。いずれの実験においても、参加者には、ある事物(標準刺激)が提示され、順次与えられる3つの事物が標準刺激と何らかのスキーマ的あるいは分類学的関係にあるかどうかを判断させる課題が与えられた。 実験1には5歳児クラスと4歳児クラスの幼児が参加した。事物間の概念的関係の理解の程度がその関係の種類によって幾分異なるものの、いずれのクラスの幼児も事物間の3つの異なる種類の関係を柔軟に切り替えて理解しうることを証左する結果が得られた。 つづく実験2では、課題の理解を促すように教示に改善が加えられ、5歳児クラスと3歳児クラスの幼児に実験1と同様の課題が実施された。年長児の課題成績は実験1を上回るもので教示の改善効果が認められたが、年少児は種々の概念的関係の理解もその柔軟な利用も劣悪であった。この年少児の結果は課題理解の不十分さによるものと考えられ、年少児に理解しやすい課題と教示を与えることによって仮説を支持する結果が得られるものと予想される。その予想を裏づけるべき次の実験を現在準備中である。
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