概念発達に関する近年の研究によると、幼児は事物間の種々の概念的関係を理解しており、所与の課題で示される概念の選好は文脈依存的な過程を反映していることが示唆される。子どもは特定の課題要求に応じて反応を柔軟に調整しているのではないかと考えられる。 本研究の目的は、幼児が事物のカテゴリー化において主題的な知識と分類学的な知識を柔軟に利用しうることを実験によって検証することであった。 最初の一連の実験では、カテゴリー化の反応選択に対する実験者の教示効果が検討された。主題的、分類学的、無関連の反応選択肢からなるカテゴリー化の強制選択課題が4歳から6歳の幼児や成人に実施された。子どもの選択行動から、幼児は2種のカテゴリー化の知識をすでに備えており、特定の概念的な選好は文脈に応じて現れることが示された。しかしながら、年少児の知識利用は年長児に比して適応的な柔軟性を欠き、様々な実験的な要因に左右されやすいことが示唆された。 つづく一連の実験では、カテゴリー知識の柔軟性がより直接的に調べられた。所与の一つの事物が他の三つの事物のそれぞれと概念的な関係を有しているかどうかを継時的に判断させる課題が4歳から6歳の幼児に実施された。その結果、年少の4歳児でさえも分類学的知識や主題的知識を柔軟に使って事物間の概念的関係を見出せることが示された。同時に年少児と年長児とでは課題遂行に差がみられ、ほとんどすべての遂行測度において年少児の成績の方が年長児よりも低かった。こうした結果は、就学前期における事物の概念的な関係に関する知識ベースや全般的な認知の柔軟性の発達に因っていると推測される。その可能性についての実験的検討が現在も続けられている。
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