研究概要 |
目は心の窓といわれるように,目の動きから心理過程を推測しようとする試みは古くから行われてきている.本研究では目の動きの中でも特にまばたき(瞬目)に注目した.瞬目は,心理過程と深く関わりながら生じ,瞬目発生の様子を瞬目時間分布に表すと,瞬目は情報処理の終了とともに発生し,その発生パターンは情報処理に伴う負荷と関係することが明らかにされている.このことから,瞬目の発生には注意が関係していると考えられる.ここでは特に選択的注意を取り上げる.選択的注意とは,外界からの刺激に対して,必要な刺激は処理を行い,不必要な処理は棄却する働きを行うものである. 本研究では,選択的注意と瞬目がどのように関わっているのかを明らかにしようとした。そのために,視覚及び聴覚モダリティに対する注意の方向や量をコントロールするための刺激提示方法である二重モダリティ呈示法を開発した.二重モダリティ呈示法とは,視覚と聴覚の刺激を提示し,いずれかのモダリティに注意を向けさせるものである.視覚モダリティに注意を向けているときに,聴覚的に注意を引くような刺激を呈示する。また聴覚モダリティに注意を向けているときに,視覚的に注意を引くような刺激を呈示する.その際の瞬目発生パターンを調べた. 本年度は,顔への選択的注意を瞬目で調べるために実験を行った.その結果,二重モダリティ課題において,聴覚モダリティに注意を向けているとき,画面によく知った顔写真が呈示されると,知らない顔写真に比べて瞬目発生が後々まで続くことが明らかになった.このことは,よく知った顔写真の場合,今の顔は見たことがあると,その顔を想起するため,瞬目発生を引き起こすのであろうと考察された.このことはり顔写真に対する選択的注意の指標としても瞬目が利用可能であり,カクテルパーティ状況や虚偽検出など様々な場面に瞬目活動が応用できることを示唆するものである.
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