本研究は子どもが未知の動詞の意味推論メカニズムを明らかにすることを目的としている。特に動詞の場合、名詞の用に一事例から意味をほぼ正しく推論する即時マッピングが可能なのか、また推論のメカニズムが発達的にどのように変遷するのかを3歳児から5歳児までの幼児を対象にして検討した。実験ではまず、3歳児と5歳児が、新奇な事物が新奇なアクションに含まれるシーンを指して発せられた新奇な語をどのように理解するのかを検討した。結果はことばの学習の初期には、子供は動詞の意味は事物と独立ではなく特定の事物と一体になったものとして理解しているということを示した。5歳児は、名詞は事物、動詞は事物とは独立のアクションにマップすることを理解していた。それに対し、3歳児は名詞条件ではアクションに関わりなく同じ事物が含まれるシーンを高い割合で選んだが、動詞条件ではランダム反応を示し、名詞がアクションに関係なく事物を指示することは理解しているが、動詞の意味はまだ事物と切り離されておらず、今回用いた刺激のように事物が別のものに代わってしまうとうまくアクションに意味をマッピングできないことが示された。なお、新奇語を導入しない統制条件では反応はランダムで、ダイナミックな画像に対して子供はアクションあるいは事物に対して特に偏った好みは示さなかった。
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