1.赤色の刺激背景が大細胞機能を抑制する事が知られているが、この色の効果が大脳左右半球機能にいかに影響するかを実証的に研究する事が本年度大きな研究目的である。以前に行った反応時間実験により、赤背景によって右半球機能が抑制される事が示唆されている。この知見を認知神経科学的に検討するため、階層構造刺激を用いた機能的MRIによる実験を実施した。17人分のデータを取得し、SPM99によって分析した。集団分析の結果は仮説を支持するものであった。すなわち、赤背景によって右半球の後頭頭頂(BA39野)に抑制が認められた。これを反応時間実験の結果と合わせ、3月下旬のCognitive Neuroscience Societyの年次総会(ニューヨーク)に発表申請し、受理された。学会発表後、学術雑誌に投稿する予定である。 2.時間周波数処理と左右半球機能の関係、及びそれに対する刺激背景色の影響を、反応時間実験によって検討した。実験の結果は時間周波数処理における右半球優位を示した。しかし周波数の変化に伴う半球差の推移に関しては、空間周波数仮説と一過型チャンネル/大細胞経路の性質から予測される高時間周波数処理における右半球優位という可能性を支持していなかった。より高い周波数範囲を用いたさらなる研究が必要である。また赤背景は左半球機能を促進した。これは大細胞系の抑制が左半球機能の促進として顕在化したと解釈された。この結果は、上智大学心理学年報に論文として掲載される予定である。 3.時計パタンを用いて、視覚及び視覚イメージにおける空間関係処理に関する機能的MRI実験を実施中である。現在半分ほどデータを取得しており、3月中には終了予定である。
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