本研究の目的は、初期視覚系機能に関する知見に基づいて、人間の大脳左右半球の機能差を理解することである。第1に、大細胞経路の機能と半球機能の関連性を解明するために、機能的MRIを用いた階層構造刺激による視覚実験を実施し、仮説を支持する結果を得た(研究1、国際学会発表)。また大細胞経路の時間応答特性に注目した行動実験を実施し、予備的な知見を得た(研究2、大学年報論文)。最後に、上下視野における赤背景の効果を検討する行動実験を実施し、仮説を支持する結果を得た(研究3、国際学術誌審査中)。第2に、空間関係処理における左右半球差を検討するために、空間周波数操作を導入した行動実験を実施し、価値の高い結果を得た(研究4、5、国内学術誌および国際学術誌論文)。また「粗い符号化」の概念を導入した行動実験を実施し、仮説を支持する結果を得た(研究6、国際学会発表)。さらに空間関係処理判断を遂行中の脳活動を機能的MRIを用いて測定する実験を実施し、予備的な結果を得た(研究7、学会発表)。第3に、半球機能の経験によるダイナミックな変化を検討するために、難易度の高い数字記憶課題をそろばん有段者に遂行させ、脳活動を機能的MRIを用いて測定する実験を実施し、仮説を支持する結果を得た(研究8、国際学術誌論文)。以上の研究実績に基づき、現在は左右差と視覚情報処理の問題を注意(研究9、学会発表)や物体認識(研究10、学会発表)などの問題へと拡張している。
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