平成12年度に最初に行った実験として、屈伸呼吸法における生理学的データと気分状態の対応に関する実験を行った。これは、屈伸呼吸法における生理、心理学的なリラクセーションに関する研究である。詳細な分析は進行中である。 次に、手を左右に反復開閉する動作と気分状態に関する実験を行った。自律訓練法を用いて、心身共にリラックスした場合に、手の動作速度、動作の規則性について検討を行ったものである。これまでの我々の研究では、気分状態がポジティブな者は動作速度が遅く、動作の規則性が高くなっているという結果であった。今回の実験では、動作速度は有意に遅くなり、仮説を支持したが、規則性についてはさらなる検討を必要とするものであった。 3つ目の実験として、対人場面における身体動揺(重心動揺)と不安の関連性を検討した。この実験では、社会不安の高さと身体動揺の大きさには正の相関が見られた。また、対人不安と身体動揺の詳細な変化パターンとの関連性の検討も行った。詳細は、分析を継続中である。 最後に、日本心理学会において、「自己組織化と複雑系の心理学」というテーマでワークショップを行った。これは、動作、呼吸、生理データの時間的な変化(運動)について、複雑系研究の視点から観察する意義について検討したものである。この意義とは、人間を身体行動、生理、環境、心理などの無数の変数の相互作用から捉えると共に、こころを観察する際に、その時間的変化、および自己組織性という面に注目することで、新たな心理学観を提唱しようとしたものである。
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