本研究の目的は、脳磁図を計測することによって、認知地図形成の時間的機序を明らかにすることである。そのため本年度は、認知地図形成過程における活動部位を求めるための発見的磁場源推定アルゴリズムと、認知地図構造を同定するための心理物理学的方法の実験手法としての適用可能性について検討した。 13Dプロジェクタによる人工現実感環境の映像を、脳磁図計測装置の電磁気シールドルームの開口部を通して被験者の眼前に設置したスクリーンに投影し、被験者に豊かな臨場感を与えることができる人工現実感システムを製作した。 2被験者に人工現実感環境を探索させ、一定の探索時間ごとに環境内の目印を対にして短時間提示し、その間の距離および方向を被験者に評定させる心理物理学的実験を行ない、認知地図形成における目印情報の役割を明らかにした。また、目印対の提示を同期信号として脳磁図を計測する実験を開始し、その結果に発見的アルゴリズムを適用して磁場源を推定した。今後は、さまざまな目印対をランダムな順序で繰り返して提示し、目印対ごとに脳磁図データを加算平均して、信頼性の高い脳磁図の計測結果を得る計画である。 3全ての目印対の間の評定距離の平均値に多次元解析法を適用するとともに、被験者の目印対の間の方向同定のデータをも使用して、被験者が記憶した目印対の配置、すなわち形成した認知地図の構造を同定した。今後は、人工現実感環境の一定の探索時間ごとに測定を行なって、探索時間が増えるにつれて、被験者が形成する認知地図が変化していく様子を明らかにすることをめざす。
|