本研究の目的は、脳磁図を計測することによって、認知地図形成の時間的機序を明らかにすることである。そのため本年度は、さまざまな人工現実感環境での探索時間の増加にともなう被験者が形成する認知地図の変化について、またランドマーク情報の配置による形成される認知地図への影響についての心理物理学的方法による実験および脳磁図計測実験をおこなった。 1.認知地図の形成過程では、脳磁図から複数個の磁場源、すなわち脳内の神経活動部位を同時に推定することが必要である。昨年度から検討してきた磁場源推定アルゴリズムでは、十分な空間的精度がえられないことが判明したので、ランドマーク対提示後のそれぞれの時間において、脳内での活動部位が時間的にどのように変化していくかを求めることができるように、発見的方法による磁場源推定アルゴリズムを更に改良した。 2.心理物理学的方法による実験により、ランドマーク情報の配置、すなわちそれらの情報が人工現実感環境迷路の交差点に配置されているか、迷路に沿って配置されているかによって、形成される認知地図が顕著に異なることを明らかにした。また、地図上でのランドマーク情報の配置の誤りに対して、経路の進行方向についての情報が維持されることが、ウエイファインディングにとって不可欠であることを明らかにした。 3.これらの心理物理学的方法によって判明した認知地図の構造と、その脳内活動部位の時間的変化の関係をもとめるための脳磁図計測実験をおこなった。
|