研究概要 |
本研究は,乳児期における感情及び自己受容感覚の発現を自己移動経験との関連で明らかにしようとするものである。 1 本研究の第1の目的は,自己移動経験が感情及び自己受容感覚の発現に及ぼす影響を,周辺視における工学的流れを利用して検討することである。研究室に設置されたムービングルームを利用し,前壁,及び側壁を前後に移動した場合の乳児の重心移動,感情表出について測定した。対象は,9ヶ月児31名であり,高バイによる移動経験児と未経験児の比較分析を実施した。その結果,高バイによる自己移動経験を有する乳児が有意に高い姿勢補償を示した。また、感情面においても有意な差異が認められた。 2 本研究の第2の目的は,乳児の自己移動経験がもたらす効果を明らかにするため,乳児の自己移動経験を統制する装置を使用して,感情及び自己受容感覚の発現との関係を検討することである。乳児が自己移動を可能にする乳児用車(Power Mobile Device,以下PMDと略す)を製作し,同志社大学心理学研究室において,9ヶ月児18名を対象として研究を実施した。目的1と同様,高バイ経験を独立変数とした分析を行った結果,PMDによる移動時間,移動距離などの変数に有意な差が認められた。また,保育園において,高バイ未経験児2名の15日間に渡るPMD連続訓練を実施した。その結果,PMD移動に伴う諸特徴が訓練によって変化する様相が明らかになった。 なお,本研究の中間報告は,日本発達心理学会第12回大会シンポジウム(2001年3月、鳴門教育大学),及びSRCD Biennial meetingシンポジウム(2001年4月,Minneapolis)においてなされる。
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