ラットやマウスなどのゲッ歯類は、行動することにより何ら利益がなくても、また場合によっては過剰に行動することが生命の維持にマイナスであっても走行行動を強く維持する。人でもマラソンやトライアスロンなど過酷な競技の選手は命の危険さえ顧みずに競技に参加する。また、サラリーマンの中には働き中毒と呼ばれるほど長時間労働を厭わない人がおり、その結果死亡することさえある。このような生命の維持にマイナスであるにもかかわらず、強く維持される行動の強化メカニズムをラットとマウスの行動モデルを用いて検討した。 第1実験では、粒餌強化子を報酬として回転輸走行行動を学習させた後、強化を無くした状況で走り続けるラットに、ナロキソン(オピオイド拮抗薬)を投与し、その行動抑制効果を確認した。つまり、動物の走行行動を維持するメカニズムの一部に内因性オピオイドによる強化効果が含まれていることを示している。この成果は第65回日本心理学会(2001.11.7-9)で発表する。 第2実験では、C57BLとBALB/cの2系統のマウスを用いて、空腹によって走行行動が強められた結果、胃潰瘍や副腎の肥大などストレス症状が強められるactivity stress効果について検討した。単に絶食させた動物よりも回転輪走行を許された動物にストレス効果は強く発現し、その効果はC57BLマウスよりも情動性が高いBALB/cマウスに強く見られた。この課題は過労死や思春期やせ症の動物モデルとも考えられており、この成果は第61回日本動物心理学会(2001.9.23-24)で発表する。さらに現在、浸透圧ポンプを用いて長期間ナロキソンを投与し、そのactivity stress抑制効果について検討を始めた。
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