研究概要 |
今年度は注意欠陥多動(ADHD)児の行動的早期診断手法研究の予備研究として,強化スケジュールが他の行動に及ぼす効果について,大学生を対象に実験研究を行なった. ・スケジュール誘導性攻撃行動に及ぼすビデオ映像の効果の研究:ADHD児に対して強化スケジュールを実施する場合,強化スケジュールの謂わば副作用として誘導される各種行動に対して事前に十分な配慮が必要である.そこで,強化スケジュールによる副次的に生じる行動のうち,臨床的な重要度から攻撃行動に注目し,ヒトのスケジュール誘導性攻撃行動(SIA)をビデオ映像により緩和する可能性を検討した.実験では参加者に書類チェツクの単純課題を行なわせ,その課題に変比率(VR)と消去の混合(mixed)スケジュールを導入した.課題遂行と同時にビデオを試聴させた.ビデオは,都市の風景を写し続ける中性的なもの,スキー選手の演技を写した爽快感を伴うもの,殺人・流血シーンを伴う暴力的なゲームの映像の3種類を用いた.この実験の結果では,暴力的映像もSIAを促進することはなかったが,同時に他の映像を試聴させてもSIAが抑制されることもなかった. ・シドマン型回避反応に及ぼす強化スケジュールの効果の研究:上記の研究と同様の目的で,シドマン型回避における回避・逃避反応の頻度と強度を指標として正の強化と負の強化の2種類の強化スケジュールの効果を測定した.実験では参加者を変時隔(VI)と消去の混合スケジュールで強化されるコンピュータ・ゲームに従事させ,同時に嫌悪的な騒音をシドマン型回避スケジュールにより回避・逃避させ,回避・逃避反応の頻度と強度を測定した.個人差は見られたものの,回避・逃避反応の頻度・強度ともに正の強化スケジュールよりも負の強化スケジュールで高く,負の強化スケジュールが個体に及ぼす情動的な効果を明らかにすることができた.
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