本研究は、保育所の幼児集団における「友だち関係」の形成における、幼児の「情緒表現」と「身体接触」の役割について明らかにしようとするものである。この点について、5つの研究(調査研究1、観察研究2、実験研究2)を行った。 研究1では、保育所に対する幼児のうち「落ち着きがない」「他児とのトラブルが多い」「自分の感情をうまくコントロールできない」などの特徴を持つ子どもを対象とし、調査を行った。その結果、子どもの行動特徴には、子ども自身の特徴に依存するもの、他児との関係性に依存するもの、保育環境に依存するものがあることが示された。 研究2では、他児との「友だち関係」が形成しにくい5歳児を対象として、保育に対するコンサルテーションと共に縦断的観察を行った。その結果、仲間関係がスムーズになるに従って、「身体接触」が減少することが見いだされた。 研究3では、5名の幼児を対象として縦断的観察を行った。その結果、日常の保育場面における情緒表現には中性的なものが多いこと、友だち関係の形成における「身体接触」の役割は子どもの年齢によって異なることが示唆された。 研究4、研究5では、動画刺激を用いて、幼児における他者の「意図」と「表情」の理解について調べた。その結果、5歳児では一見すると相矛盾する「表情」から他者の正しい「意図」を推測することができるようになることが示唆された。
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